大判例

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札幌地方裁判所 事件番号不詳

原告

大場章寛

被告

札幌市教育委員会

右代表者委員長

牧口準一

右訴訟代理人弁護士

門間晟

右指定代理人

今井信一

村井鍛

西田健一

大友鉄雄

遠藤正行

主文

本件訴えを却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

被告が昭和六二年五月二二日付けで原告に対してした同月二三日から同年八月二二日までの三か月間停職を命ずる旨の処分を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  本案前の申立て

主文同旨

2  本案に対する答弁

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  被告は原告に対し、昭和六二年五月二二日付けで、同月二三日から同年八月二二日までの三か月間停職を命ずる旨の処分(以下「本件処分」という。)をした。

2  本件処分の理由は左記のとおりである。

原告は、昭和六二年三月一八日午後四時過ぎ、校舎前路上を歩いていたところ、校舎二階からあだ名を呼ばれたものと思い込み、土足のまま二階の教室に駆けあがり、男子生徒一人に駆け寄り、六人の生徒が見ている目の前で、相手の釈明も聞かぬまま、いきなり同生徒の右耳の上を拳で殴り、さらに、上腕部、脇腹を殴り、腹部を蹴るなどの暴力行為を行い、よって、同生徒に頭部、右耳介及び右上腕打撲傷により約三日間の加療を要する傷害を負わせた。

かかる行為は、地方公務員法三三条の規定に違反し、よって同法二九条一項一号及び三号の規定に基づき、懲戒処分を行う。

3  しかるに、本件処分は、次の(一)ないし(三)に述べるとおり、重きに失し、不当かつ違法である。

(一) 処分事由が誇大で、事実に反する。

(二) 原告の行為の背景となった生徒の原告に対する長期間にわたる執拗ないやがらせやこれを放置して適切な措置を講じない学校管理者の責任を考慮していない。

(三) 原告の行為が生徒の不法行為に対する正当防衛であることを看過した。

4  本件訴えの適法性

原告は、昭和六二年七月二〇日、札幌市人事委員会に対し、本件処分に対する不服申立てをし、昭和六三年一〇月一四日、同委員会から本件処分を承認する旨の裁決を受け(同日裁決書送達、以下「本件裁決」という。)、平成元年一月一二日、同委員会に対し、札幌市職員の不利益処分についての不服申立てに関する規則(昭和四六年一二月二八日人事委員会規則第六号、以下「本件規則」という。)一八条一項三号を理由とした再審請求をした(以下「本件再審請求」という。)が、同年三月二九日、同委員会からこれを却下する旨の決定を受けた(同日決定書送達、以下「本件決定」という。)ので、裁判所職員に出訴期限が平成元年六月二九日であることを確認したうえ、同日、本件訴えを提起した。

5  よって、原告は本件処分の取消しを求める。

二  被告の本案前の主張

1  原告は、本件裁決のなされたことを知った昭和六三年一〇月一四日から三か月以内である平成元年一月一三日までに訴えを提起しなければならなかったにもかかわらず、本件訴えが提起されたのは平成元年六月二九日であるから、本件訴えは不適法である。

なお、原告主張の本件再審請求は、再審事由に基づかない請求として、札幌市人事委員会により、実体的判断がなされることなく却下されたのであるから、行訴法一四条四項の適用の余地はないというべきである。

2  仮に、本件再審請求に関して行訴法一四条四項が適用されたとしても、原告は、その却下決定の送達を受けた同年三月二九日から三か月以内である同年六月二八日までに訴えを提起しなければならなかったにもかかわらず、本件訴えが提起されたのはこの期間の経過後であるから、本件訴えは不適法である。

三  請求原因に対する認否

請求原因1、2の各事実は認める。同3の主張は争う。同4のうち、裁判所職員に出訴期限の確認をしたとの点は不知、その余は認める。

第三証拠

一  原告

(証拠略)の成立はすべて認める。

二  被告

(証拠略)

理由

一  被告が原告に対して本件処分をなしたこと、原告が昭和六二年七月二〇日に札幌市人事委員会に対して本件処分に対する不服申立をしたこと、原告が昭和六三年一〇月一四日に同委員会から本件処分を承認する旨の本件裁決を受けた(同日裁決書送達)こと、原告が平成元年一月一二日に同委員会に対して本件規則一八条一項三号を理由とした本件再審請求を行ったこと、原告が同年三月二九日に同委員会から本件決定を受けた(同日決定書送達)こと及び原告が同年六月二九日に本件訴えを提起したこと、以上の各事実は当事者間に争いがない。

二  ところで、成立に争いのない(証拠略)によれば、本件規則一八条は、再審の請求に関して、「判定の基礎となった証拠が虚偽のものであることが判明した場合」(同条一項一号)、「事案の審査の際提出されなかった新たな、かつ、重大な証拠が発見された場合」(同項二号)及び「判定に影響を及ぼすような事実について、判断の遺漏が認められた場合」(同項三号)に限って当事者は再審を請求することができ、かつ、再審の請求をするには書面に再審を請求する事由を記載してこれを行わなければならない旨を規定し、また同規則一九条一項は、「人事委員会は、再審請求書が提出されたときは、……再審の請求の事由等について調査し、再審の請求を受理すべきかどうかを決定しなければならない。」と規定していることが明らかであるところ、成立に争いのない(証拠略)によれば、本件再審請求の請求書には、本件規則の「第五節 再審 第一八条(3)により、次の事由の申立てをします。」との記載及び本件裁決のした事実の認定と判断とを論難する事情の記載があるのみで、どの点が判断の遺漏に該るかの具体的指摘がないばかりでなく、その記載された事情も、本件処分に対する不服申立てにおける主張を繰り返し、また、これをより詳細に主張し、あるいはそれまでに主張されなかった新たな事情を指摘するにすぎないものと認められるから、本件再審請求は、本件規則一八条一項三号(判断遺漏)に該当する事由の主張に欠けるというほかなく、その他本件規則が規定する再審事由に基づく請求であるとの趣旨を読み取ることもできないのであるから、結局本件再審請求は本件規則が要求する再審事由の記載を欠いた不適法なものといわざるを得ず、前記乙第六号証によれば、札幌市人事委員会は同様の理由で本件再審請求を却下したことが認められる。

三  そうすると、本件訴えに関しては行訴法一四条四項適用の前提となる適法な(再)審査請求の経由がないから、これを適用する余地がなく、その出訴期間は、同条一項により、原告が本件処分を承認する旨の裁決書の送達を受けて本件決裁のあったことを知った昭和六三年一〇月一四日を起算日とすることになり、平成元年六月二九日に提起された本件訴えは、出訴期間経過後の不適法な訴えであることは明らかであって、却下を免れない。

四  よって、本件訴えを却下することとし、訴訟費用の負担につき行訴法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 若林諒 裁判官 長久保尚善 裁判官 宮永忠明)

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